各層の塔身の四面には四方仏(しほうぶつ)をきざみ、軒裏には隅木(すみぎ)や垂木(たるぎ)を造り出し、四隅の隅木の先には目をむき牙を出した鬼面(きめん)を彫刻しており、鎌倉時代の力強さと写実性がよく表現されています。
また、朱による彩色の跡もみられます。初層の塔身には「・・・寛喜(かんぎ)2年(1230)庚寅(かのえ・とら)十一月日 大檀那沙弥浄心(おおだんなしゃみじょうしん) 并藤原氏 大工兼仏師幸西・・・」の銘があり、制作年代・建立者・工人などがわかる鎌倉初期の代表的石造多層塔の一例として、非常に貴重なものです。
八代市袋町に所在する医王寺(いおうじ)の石塔にも「沙弥浄心」の銘がありますが、こちらは正平(しょうへい)16(1361)年に制作されており、十三重塔の「大檀那沙弥浄心」と同一人物とは考えにくいです。
国指定有形文化財であるこの塔は、球磨郡湯前町の明導寺(みょうどうじ)(現在は城泉寺といいます)にあったものを、大正時代に八代の現在地に移したもので、明導寺九重石塔(くじゅうせきとう)と七重石塔(しちじゅうせきとう)もそれぞれ国指定の重要文化財になっています。
平成28(2016)年4月の熊本地震により、塔身と屋根の一部が大きくずれるなどの被害がありましたが、平成28(2016)年11月から平成29(2017)年3月にかけて行われた災害復旧工事により修復されました。
名称・・・・・・・・・十三重塔(じゅうさんじゅうとう)
指定ランク・・・・・・国指定
種別・・・・・・・・・有形文化財・建造物
指定年月日・・・・・・昭和8(1933)年1月23日
法量・・・・・・・・・高さ 6.62m
制作年・時代・・・・・1230(寛喜2)年・鎌倉時代