所蔵者・・・釈迦院(八代市泉町柿迫5535)
所在地・・・八代市立博物館未来の森ミュージアムに寄託中
弉善大師(しょうぜんたいし)は、釈迦院の開山で、奈良時代末から平安時代初期にかけて活躍したとされます。八代の生まれと伝えられ、宇城市豊野の浄水寺や山都町・金福寺ほか、いくつかの天台宗寺院を開いたといわれます。浄水寺に残る灯籠竿石には銘文が残り、延暦20年(801)、この灯籠が、弉善和尚の発願で造立奉納されたと記されています。
本像は、頭体部を一材から彫出し、膝前に横一材を寄せますが、その寄木の方法は、釈迦院の山王神坐像と同じ工法です。本像は肖像彫刻であるため、顔の表情も実人的に表現されており、山王神とは作風を異にするように見えますが、細部を観察すると、目の彫り口や頬の肉感、耳の表現方法が共通していることがわかり、同一仏師による制作と考えられます。
本像は、山王神と同じく、仁治3年(1242)、仏師長実が制作した肖像彫刻と考えられます。ただ、弉善大師の生存した年代とは時代が大きく隔たるので、本人の風貌を正しく表現したとは考えにくいですが、鎌倉時代の優れた肖像彫刻の一つとして注目される存在です。