塩浜の図 しおはまのず
江戸時代の八代海沿岸で営まれた「塩づくり」の様子を描いたものです。
向かって左の画面には、上半身をあらわにして、柄振という道具で塩の結晶がついた砂を集めている女性がいます。たいへんな重労働なのでしょう。そのとなりの女性は、集めた砂を笊に入れて運んでいます。土盛りした沼井(ぬい)に、塩が付いた砂を入れ海水をかけると、濃厚な塩分を含んだ「かん水」ができます。これを釜屋に運び、釜炊きして水分を蒸発させると塩ができるのです。
向かって右の画面の奥に見える島は高島です。画面右手前や高島の手前に描かれた小屋は濃厚な塩水「かん水」を焚く窯屋です。その向こうに見える八代海(不知火海)には左から大築島、加々島、白島、三ツ島、大島が描かれ、海の向こうには天草諸島と宇土半島が連なっています。
八代では、潮の干満を利用して海水を自動的に取り入れる「入浜式塩田」で塩が作られていたようです。満潮時には地面が海面より低くなる、干拓地ならではの方式です。本図は、この当時の八代の景観や塩作りの様子を伝える資料としてたいへん貴重です。
本図の筆者は不明ですが、背景の島々が実景をもとに正確に描かれていること、またその流麗な筆法から、細川家の御用絵師をつとめた矢野派の作と考えられます。
作者 不明(矢野派)
品質形状 紙本著色 額装 2面
法量 各縦70.1cm 横83.6cm
時代 江戸時代末期(19世紀)
所蔵 八代市立博物館未来の森ミュージアム
八代市立博物館収蔵品検索システム「塩浜の図(向かって左)」
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八代市立博物館収蔵品検索システム「塩浜の図(向かって右)
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