蛤かき図 はまぐりかきず
江戸時代末期の八代沿岸部で営まれていた蛤かきの様子を描いたものです。
複数の女性が干潮時の砂浜に出て、「蛤かき」という道具を使って、砂地に生息する蛤を掘り起こしています。蛤かきの柄を肩から吊るした紐に結びつけ、楽にそして安定した作業ができるよう工夫していることがわかります。腰には蛤を入れる魚籠を吊るしています。
画面の背景に目を向けると、向かって左の海岸線に浮かぶ島は万葉集にも歌われた水島です。島の周辺には船が3艘浮かんでいます。一艘は屋根の付いた屋形船のようです。海の向こうに連なるのは天草諸島。つまり、ここに描かれた漁場は球磨川河口ということになります。
労働着を来た女性たちに混じって、紋付を着た身なりのよい女性も描かれています。「奥様、ほらヒトデ」そんな会話が聞こえてきそうです。向かって右の画面では、猛禽が魚を捉えて舞い上がったところを子どもたちが見上げています。女性の一人がそちらを見て何かを言っているようです。にぎやかな声が聞こえてきそうな作品です。八代海で営まれた漁業に関する貴重な記録画です。
作者 不明(矢野派)
品質形状 紙本著色 額装 2面
法量 各縦70.1cm 横83.6cm
時代 江戸時代末期(19世紀)
所蔵 八代市立博物館未来の森ミュージアム
八代市立博物館収蔵品検索システム「蛤かき図(向かって左)」
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八代市立博物館収蔵品検索システム「蛤かき図(向かって右)
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