文化財さんぽ⑭
八代妙見祭笠鉾の装飾
(やつしろみょうけんさいかさほこのそうしょく)
◆熊本県指定重要民俗文化財
◆平成15年4月16日指定
◆妙見宮祭礼神幸行列関係資料
毎年秋、八代妙見祭に出される笠鉾は、江戸時代に造られたものが現在も用いられ、当時の工芸技術の粋(すい)を集めた貴重な文化財です。各笠鉾には、さまざまな飾りがつけられていますが、その中に兎(うさぎ)の姿もあります。
兎は、童謡「故郷(ふるさと)」に「兎追いし」と歌われるように、食用となる身近な動物でした。また、『古事記(こじき)』に登場する「因幡(いなば)の白兎(※1)」、仏教説話(ぶっきょうせつわ)に由来する「月の兎(※2)」、謡曲『竹生島(ちくぶじま)』にちなんだ「波の上を走る兎(※3)」など、昔からさまざまなイメージで表されてきました。中国の神話では、仙薬(せんやく)すなわち不老不死(ふろうふし)の薬を作るとされます。また、江戸時代中ごろからは、ペットとして兎を飼うようになり、高価なことから富(とみ)の象徴ともされました。
このように、兎をはじめとする笠鉾の飾りは、不老長寿(ふろうちょうじゅ)や商売繁盛(しょうばいはんじょう)、家内安全(かないあんぜん)など、さまざまな願いを込めたラッキーモチーフなのです。
(※1)ワニをだまして傷ついた兎を大国主命(おおくにぬしのみこと)が助けた。
(※2)倒れていた老人(実は帝釈天【たいしゃくてん】)を助けようと、火に飛び込んでわが身を食べさせた慈悲深い兎が月に昇った。
(※3)「月海上に浮かんでは兎も波を奔(かけ)るか」(月が水面に映る様子は、月の兎が波の上を走っているように見える)
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笠鉾「猩々」下欄間の兎 |
笠鉾「蘇鉄」下屋根の兎 |
(紺屋町笠鉾猩々保存会所蔵) |
(二之町笠鉾蘇鉄保存会所蔵) |