文化財さんぽ②
旧郡築新地甲号樋門と潮受堤防
(きゅうぐんちくしんちこうごうひもんとしおうけていぼう)
〜国内最大級の干拓遺跡〜
◆国指定重要文化財(建造物)
◆平成16年7月6日指定
◆明治33年(1900)建造
◆郡築三番町
畳表の原草となる「い草」の生産日本一を誇る八代平野は、その大半が江戸時代以降の干拓でできた土地です。遠浅の八代海の干潟(ひがた)を堤防で閉め切り、石造の樋門から排水を行う干拓が、いく度も繰り返され、肥沃(ひよく)な農地へと成長しました。
郡築甲号樋門は、当時の八代郡が造成した「郡築新地」(明治37年完成)の遺構です。大小の砂岩の切石を垂直に積み上げた構造で、樋門本体の下部には、10連のアーチ状通水部分があり、一見眼鏡橋に似た外観です。樋門は高さ5.6m、幅5.2m、長さ33.1mで、現存する明治期の樋門としては全国最大の規模です。また、当時の石垣による潮受堤防も1Kmにわたって残っています。
熊本県内の国指定重要文化財の石造建造物としては、有名な通潤橋(つうじゅんきょう・山都町)や霊台橋(れいたいきょう・美里町)があります。この樋門と堤防は、精巧な石積み技術が発揮され、干拓という大事業を成し遂げてきた郷土の歴史を物語る貴重な文化遺産です。
八代平野には、こうした樋門や堤防などの干拓遺跡が、随所に残っています。
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樋門の全景 |
大小の砂岩の切石を垂直に積み上げた構造 |