中国元時代の高僧平石如砥(1268-1356)が日本から元にわたった僧侶竺芳祖裔(南禅寺45世)に書き与えたもので、
旧八代城主松井家に伝来しました。この墨蹟を入手した松井家初代康之(1550-1612)は、茶道に造詣深く、古田織部と親交がありました。
墨蹟には織部が康之に宛てた書状が附属しており、その記述から織部がこの墨蹟を良いものだとほめたこと、織部が表具と箱を仕立てたことがわかります。
この墨蹟は、昭和63年に重要文化財に指定され、これまで多くの展覧会に出品されてきましたが、近年劣化が進み展示が難しい状況にありました。このため、所有者である一般財団法人松井文庫では、国(文化庁)、熊本県、本市の補助事業を活用して抜本的な修理を行いました。
修理事業の概要は下記のとおりです。
【事業名称】
平石如砥墨蹟〈与竺芳祖裔偈/至正九祀己丑秋〉国宝・重要文化財美術工芸品保存修理抜本強化事業
【事業目的】
経年による汚れ、虫損による料紙の欠失、全体の折れ、表具の損傷について修理を行い、熟覧・展示が可能な安定した状態にする。
【全体の事業期間】
平成30年4月6日から平成31年3月28日まで
【事業体制】
補助事業者 一般財団法人 松井文庫
請負事業者 株式会社 宰匠
【総事業費および補助金額】
総事業費 2,400,000円
うち国庫補助金 1,560,000円
【修理内容の概要】
表装を解体し、本紙の肌裏紙を取り替える抜本修理を行った。附の古田織部書状については、裏打紙を除去し、もとの折紙の状態
に戻す抜本修理を行った。玄甫霊三添状については虫損の修理を行った。
【活用の予定】
2019年10月25日から12月1日まで、八代市立博物館未来の森ミュージアム秋季特別展覧会「もののふと茶の湯~利休から織部・忠興・康之へ~(仮
称)」にて展示予定。
【修理イメージ】
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(修理前) | (修理後) |
本事業は、文化庁美術工芸品国宝・重要文化財保存修理抜本強化事業国庫補助金の交付を受けて実施されています。
Supported by the Agency for Cultural Affairs.Government of Japan in the fiscal 2018