○八代市農林水産物振興条例

令和2年12月18日

条例第47号

八代市の農林水産業は、その豊かな自然と温暖な気候を生かしながら、安心で安全な農林水産物を生産し、全国有数の食料供給基地として名をせてきた。特に八代産冬春トマトについては日本一の耕作面積を誇っている。

しかしながら、近年、農林水産物の価格低迷及び燃油をはじめとする資材の高騰による生産コストの増大等が大きな問題となっている。

さらに、健全な食生活に対する市民意識の高まりなど、農林水産物及び農山漁村を取り巻く環境は大きく変化してきている。

このため、農林水産業を正しく理解し、かつ、国土の保全、水源のかん養や自然環境の保全に寄与している農山漁村に対する市民の理解を深めるとともに、経済の循環や地域の活性化を促進し、市民の郷土愛を育むような取組が重要である。

ここに、市、生産者、事業者及び市民が自ら担う役割を定め、広く市民に食と農林水産業及び農山漁村の振興に関する基本的な理念及び施策の方向性を示し、その取組を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、八代市の農林水産業及び農山漁村の振興に関する基本理念となる事項を定め、これに基づく施策を市・生産者・事業者・市民総参加のもと総合的かつ計画的に推進することにより、本市における農林水産業の持続的な発展及び活力に満ちた農山漁村の構築を図り、豊かな市民生活の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 八代産農林水産物等 市内で生産された農林水産物及びこれを市内で加工したものをいう。

(2) 生産者 市内で農林水産物を生産する者及びその組織する団体をいう。

(3) 事業者 次のいずれかに該当する者及びその組織する団体をいう。

 市内で農林水産物又はこれを加工した製品の流通を行う者

 市内で農林水産物又はこれを加工した製品の加工を行う者

 市内で農林水産物又はこれを加工した製品を調理し、又は飲食物として提供する者

(4) 消費拡大 八代産農林水産物等をより身近な地域で優先して消費することはもとより、全国的に消費されることをいう。

(5) 多面的機能 水源のかん養、自然環境の保全、良好な農山漁村の景観の形成、地域文化の伝承等、農林水産業及び農山漁村が有する農林水産物の供給以外の様々な機能をいう。

(6) 6次産業化 1次産業としての農林水産業、2次産業としての加工・製造業及び3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、市内で生産された農林水産物を活用した新たな付加価値を生み出す取組をいう。

(7) 地産地消 八代産農林水産物等を市内で消費し、又は利用することをいう。

(基本理念)

第3条 市、生産者、事業者及び市民は、健全で豊かな市民生活の向上及び農林水産業における八代独自の文化を継承していくことを旨として、次項に規定する取組を実施するよう努めるものとする。

2 市、生産者、事業者及び市民は、相互に連携し、八代産農林水産物等の情報を共有することを通じてそれぞれの立場を理解し、及び協力しながら八代産農林水産物等の消費拡大を推進することにより、市内における農林水産業を健全で持続可能な産業として振興し、及び発展させるよう取り組むものとする。

(市の役割)

第4条 市は、国、県、生産者、事業者及び市民と連携し、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)における取組の総合的な施策を推進するものとする。

2 市は、国及び県に対して、農林水産業及び農山漁村の振興に関する施策の提言を積極的に行うよう努めるものとする。

3 市は、生産者が実施する農林水産業の振興に関する施策について、情報の提供、助言等を行うものとする。

(生産者の役割)

第5条 生産者は、安心で安全な八代産農林水産物等の生産に係る自らの役割を自覚するとともに、消費者の意向を反映した質の高い八代産農林水産物等の生産供給に努めるものとする。

2 生産者は、八代産農林水産物等の品質等に関する情報を積極的に提供するとともに、市、事業者及び市民が行う八代産農林水産物等の消費拡大を推進するための取組に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、その事業活動及びこれに関連する活動を行うに当たっては、八代産農林水産物等の利用を促進すること等により、基本理念の実現に協力するよう努めるものとする。

(市民の役割)

第7条 市民は、食の重要性を認識し、健全で豊かな食生活を心がけるとともに、地産地消を推進し、さらに八代産農林水産物等の市外への推奨・広報に積極的に努めるものとする。

2 市民は、農林水産業及び農山漁村に支えられた自らの暮らしを通じて、安心で安全な食料を安定的に供給する機能及び多面的機能を有する農林水産業及び農山漁村の重要性に対する理解を深めるとともに、これらの振興に協力するよう努めるものとする。

3 市民は、農林水産業及び農山漁村の有する多面的機能を発揮するため、農林水産業の体験その他の主体的な参画及び協働による農山漁村の保全活動に努めるものとする。

(生産者、事業者及び市民の交流支援)

第8条 市は、生産者、事業者及び市民による交流を支援することにより、それぞれの立場の理解が深まり信頼関係が構築されるよう努めるものとする。

(啓発活動等)

第9条 市は、八代産農林水産物等の魅力及び活用に対する市民の関心及び理解を深め、並びに生産者、事業者及び市民の間の相互理解を促進するため、情報共有、広報その他の啓発活動等を行うよう努めるものとする。

(生産、供給及び市内流通の促進)

第10条 市は、八代産農林水産物等が安定的に生産され、及び供給されるよう、八代産農林水産物等の生産拡大、農林水産業の担い手に対する支援及び八代産農林水産物等の市内流通の促進に努めるものとする。

(生産環境及び生産基盤の整備等)

第11条 市は、八代産農林水産物等の生産性の向上を図るため、農林水産業の生産環境(農地、山林、漁場等の周辺の環境をいう。)及び生産基盤の整備、保全及び活用のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(八代産農林水産物等の優先利用)

第12条 市は、自らが主催する行事等において農林水産物の提供等を行うときは、できる限り八代産農林水産物等を利用するよう努めるものとする。

2 市は、学校給食の食材調達に当たっては、八代産農林水産物等を優先的に利用するよう努めるものとする。

(ブランド化の推進)

第13条 市は、生産者、事業者及び市民と連携し、八代産農林水産物等のブランド化を進め、その魅力を国内外に発信するものとする。

(他の施策等との連携)

第14条 市は、八代産農林水産物等の活用の推進に当たっては、食育の推進に関する施策との連携を図るものとする。

2 市は、地産地消、都市と農山漁村の交流等に関連する事業と連携し、八代産農林水産物等を地域資源として有効に活用するとともに、これに関する多様な媒体による広報宣伝の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。

(6次産業化の支援)

第15条 市は、生産者及び事業者が行う6次産業化を支援するとともに、6次産業化に対する市民の関心及び理解を深めるため、市民に対する情報提供、啓発活動等を実施するよう努めるものとする。

(消費拡大の日の制定)

第16条 市は、八代産農林水産物等への市民の関心及び理解を深めるとともに、生産者、事業者及び市民と連携した取組を推進するため、各々の八代産農林水産物等についての消費拡大の日を定めることができる。

(推進体制の整備)

第17条 市は、食と農林水産業及び農山漁村の振興に関する施策を生産者、事業者及び市民とともに推進するための効率的な体制の整備に努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

八代市農林水産物振興条例

令和2年12月18日 条例第47号

(令和2年12月18日施行)