○八代市環境基本条例

平成17年8月1日

条例第207号

八代市民は、豊かな水に魅かれて肥よくな土地をひらき、長い歴史の中で築かれた文化と限りない自然の恵みを受けながら生活してきた。

しかし、近年においては、社会情勢の変化とともに、環境への配慮に欠けた利便性の追求など利己的な行動が継続されたことによって、この良好な環境からの恵沢を失おうとしている。

そもそも良好な環境は、健康で文化的な生活を営む権利を支える最も基礎となるものであって、将来の市民にも公平にその恩恵を受ける権利があるにもかかわらず、今や環境の著しい変化は地球規模にまで及び、このまま推移すれば、人類を含む生命の存続基盤さえ脅かされることにもなりかねない。

今こそ我々は、微妙な均衡の上に成り立っている環境の中で、すべての生き物と一緒に生活していることを深く認識し、自らの行動に問いかけ、自らの意志をもって、豊かな自然と文化を次の世代へ引き継ぐために最大の努力を払わなければならない。

ここに我々は、それぞれの責任と役割に応じて、主体的にそして手を携えて良好な環境の保全と創造を図り、持続的に発展することのできる地域社会を築くため、この条例を制定する。

目次

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 施策の基本(第8条―第10条)

第3章 環境施策の総合調整等(第11条―第13条)

第4章 環境への配慮の推進(第14条―第16条)

第5章 環境審議会(第17条)

第6章 補則(第18条・第19条)

附則

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、市における環境政策の理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、良好な環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「良好な環境」とは、生活環境(人の生活に密接に関係する財産並びに動植物及びこれらの生育環境を含む。)、自然環境及び歴史的文化的環境が調和したものをいう。

(環境政策の理念)

第3条 すべての環境資源の適正な保全と活用を図り、現在及び将来の市民が公平に良好な環境の恵沢を受けながら、継続して生活できるようにしなければならない。

2 生態系への適切な配慮を行い、すべての生命が持続的に生存できる環境の確保に努め、人は自然と共生していかなければならない。

3 地球市民という自覚のもとに、地球環境の保全に関する可能なあらゆる取組みを積極的かつ長期的に推進しなければならない。

4 市、市民及び事業者は、それぞれの責務に合致した主体的な取組みと協働とによって、良好な環境を保全し、及び創造することに努めなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、自然的社会的条件に応じて、長期的な視野に立った環境の保全及び創造に関する総合的な計画を策定し、これを実施する責務を有する。

2 市は、前項の計画を策定し、これを実施するに当たっては、前条に定める環境政策の理念を基底とし、これを最大限に尊重しなければならない。

3 市は、良好な環境の保全及び創造に関する市民意識の啓発に努めなければならない。

(市民の責務)

第5条 市民は、自らが環境に影響を及ぼしていることを深く認識し、その影響の低減が図られるような生活行動への変革に努めるとともに、市の環境施策の推進に積極的に参加し、協力する責務を有する。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、自らの責任において、その事業活動に伴って生ずる環境への負荷を低減するために必要な措置を講ずることによって公害を防止するとともに、市の環境施策の推進に積極的に協力する責務を有する。

2 事業者は、環境保全に係る法令等に違反しない場合においても、環境への負荷を更に低減するために必要な最善の努力をしなければならない。

(滞在者等の責務)

第7条 旅行者その他の滞在者等は、自らの環境の保全に努めるとともに、市が実施する環境施策に協力する責務を有する。

第2章 施策の基本

(基本的施策)

第8条 市は、第3条に定める環境政策の理念の実現を図るため、次に掲げる施策を一体的に実施するものとする。

(1) 事業活動に伴う大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動、悪臭等の公害を防止し、生活排水による水質の汚濁、交通車両及び廃棄物による環境の汚染等都市生活型公害の防止対策を推進するとともに、新たな環境汚染の発生の防止を図ること。

(2) 水の循環構造の保全、エネルギーの合理的かつ効率的利用、再生資源の利用等を促進し、資源を適切に保全し、又は効率的に利用することによって環境への負荷の低減を図ること。

(3) みどり、水辺、良好な景観及び歴史的文化的遺産の保全並びにこれらを活用し、利用者に配慮した施設の整備等を行うことにより、心地よく調和した潤いと安らぎのある環境の保持と創出を図ること。

(4) 限られた自然条件のもとで生息する少な動植物には特に配慮するとともに、二次的自然等を整備するに当たっては、循環機能が促進されるよう生物の多様性の確保を図ること。

(5) 地域環境及び地球環境との関わりについて理解と認識を深め、それぞれの立場において責任ある行動がとれるよう環境教育の推進及び環境学習の促進を図ること。

2 市は、前項各号に掲げる施策を実施するに当たっては、都市構造、経済活動、市民の生活行動様式の状況等を考慮しなければならない。

(環境基本計画)

第9条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、八代市環境基本計画(以下「基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 基本計画は、市の望ましい地域環境の姿を明らかにし、これを実現するための方針及び取り組むべき具体的施策を示すとともに、市、市民及び事業者のそれぞれが配慮すべき事項その他必要な事項を定めるものとする。

(基本計画の策定)

第10条 市長は、基本計画を定めるときは、あらかじめ市民及び事業者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、第5章に定める八代市環境審議会の意見を聴かなければならない。

2 前項による市民及び事業者の意見は、第3条に定める環境政策の理念に即したものでなければならない。

3 市長は、基本計画を策定したときは、これを速やかに公表しなければならない。

4 前3項の規定は、基本計画を変更する場合に準用する。

第3章 環境施策の総合調整等

(総合的調整)

第11条 市長は、次に掲げる環境施策に関わる事項について総合的な調整を行うことにより、環境行政を実効的かつ体系的に推進するものとする。

(1) 基本計画の策定及び変更に関すること。

(2) 環境施策の調整及び実施並びに進行管理に関すること。

(3) その他環境行政を総合的に推進するための重要な案件に関すること。

(環境施策の広域的調整)

第12条 市は、環境施策の策定及び実施に関して、広域的な調整を行う必要があると認めるときは、国、県及び近隣の地方公共団体と積極的に協議し、関係機関との連携を図るものとする。

(自主的活動の促進)

第13条 市は、良好な環境の保全及び創造に関する積極的かつ自主的な活動が促進されるよう適切な支援措置を講ずるものとする。

2 市は、事業者による積極的な環境保全活動を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。

3 市は、市民及び事業者による積極的な活動の推進に寄与するため、適切な情報を提供するよう努めるものとする。

第4章 環境への配慮の推進

(環境への配慮)

第14条 環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を計画しようとする者は、その事業計画による環境への影響を的確に把握するよう努めるとともに、必要に応じて当該事業計画内容の見直し、代替案の検討を行うなど、環境への適正な配慮に努めなければならない。

2 市は、前項の事業計画者が環境への配慮を適正に行うために必要な情報の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

(環境保全協定等の締結)

第15条 市長は、環境を保全するために特に必要があると認めるときは、事業者に対し、環境保全に関する協定等の締結を求めることができる。

2 市長は、前項の求めに応じない事業者があったときは、その旨を公表することができる。

(指導等)

第16条 市長は、良好な環境の保全及び創造を図る上において、これを著しく阻害し、又はそのおそれがある者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。

2 市長は、前項の規定に基づく勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その内容等を公表することができる。

第5章 環境審議会

(環境審議会)

第17条 市の総合的かつ計画的な環境行政の推進について調査審議するため、八代市環境審議会(以下「審議会」という。)を設置する。

2 審議会は、市長から諮問のあった事項について調査審議し、その結果を答申するとともに、必要な意見を述べることができる。

第6章 補則

(財政上の措置)

第18条 市は、良好な環境の保全及び創造を図るために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第19条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、平成17年8月1日から施行する。

八代市環境基本条例

平成17年8月1日 条例第207号

(平成17年8月1日施行)